よわいめ|ヨワイメ

同時代カルチャーをレビューするブログ

2018-01-01から1年間の記事一覧

有地慈個展『スーパー・プライベートⅢ-約束された街で-』評

以下、映像作品から見た展示感想です。 本展ステイトメントの後半部では明確に①「震災を忘却する時間と娘が成長する時間」が重ねられていますが、前半部の記述を読むと、そこには別の時間、つまり新興宗教に母の誘いで入信したという②「宗教(母)を忘却する…

もう一度、弱さの方へ--パープルームの「アトリエ主義」について--

ピカソはボナールを「女々しく」思った。と「弱さの英雄主義について」の中で、松浦寿夫は述べている。対象の構造を解体し再構成する主体性と社会的事件に反応する瞬発性。二つの次元において確保されたピカソの決断力からすれば、絵の完成を遅延させるボナ…

「言葉は存在の家である」–絵画言語と思想–

エドヴァルド・ムンク「叫び」1893 年油彩 91cm × 73.5cm オスロ国立美術館蔵 初めに誤解を解いておく必要がある。19世紀後半ノルウェーを代表するエドヴァルド・ムンクの誰もが知る代表作《叫び》(図1)は中央の人物=ムンクが叫んでいるのではなく、世界…

あのカーテンの向こう側———黒沢清と半透明の美学

黒沢清は彼自身が最後のホラー映画と言った『回路』以降も、美術批評家の椹木野衣が「映画であるだけで充分怖い」と評するほどに、映画全体にホラー的要素を潜伏させたフィルモグラフィを築いてきた。黒沢自身はホラー映画の特質について、「監督自身の死に…