よわいめ|ヨワイメ

同時代カルチャーをレビューするブログ

10月28日のいろいろ。

ピエロ・デッラ・フランチェスカ最大の謎を解く奇本が翻訳されていた!

夕方、芸大図書館に立ち寄ると、それは新収蔵コーナーに置かれていた。『かたちは思考する』のすぐ横に。ローマ大で教鞭を執る美術史学者シルヴィア・ロンケイの大著。ピエロの最大の謎とは言うまでもなく「キリストのむち打ち」であるが、これまで西方側の史料に偏重してきた本作の読解に対して、ビザンティン帝国の史料を網羅的に活用することで、綜合的解明を目指した研究書のようだ。パラパラめくると、体裁は研究論文風ではなく、断章形式になっていて、格調高い。ロベルト・ロンギがモランディと同様に評価した初期ルネサンスの画家の1人がピエロなので、個人的にもこれが重要な著作であることは明らかなのだが、今の僕のリテラシーとスケジュールでは到底、太刀打ちできそうにないので、一旦保留することにした。(どうせ誰も借りないだろう。。)

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ところで、図書館に行った理由は、『イギリス美術史』を借りるためであった。聞いて驚くかもしれないが、おそらく日本語で読める唯一のイギリス美術の通史本がこれである。最近だと、フューズリ本が出版されたりと、個別研究は日本でもちらほら目にするようになったものの、通史となると、皆無にちかい。YBA以降の国際的な評価の高さからすると、意外ではあるが、比して、日本国内での関心は低い。というわけで、イギリス美術史といえば、サイモン・ウィルソンの著作にまず向かうことになるのだ。たぶん。

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帰宅途中、吉祥寺の武蔵野市立吉祥寺美術館できくちちき絵本展「しろとくろ」展に何の気なしに立ち寄ってみた。これが素晴らしかった。菊地さんはデザイン関係の仕事に携わりながら、33歳から自費出版で絵本を作り始め、翌年の2013年にスロヴァキアで開催された世界最大規模の絵本原画コンクール「ブラティスラヴァ絵本原画展」で「金のりんご賞」を受賞し、本格的に絵本作家への道を歩みだした方。子供騙しの物語ではなく、子供にこそ通じる「抽象画」の連続で、感動した。絵本にはこういうことが可能なのか。機会があれば、絵本を購入してみたい。

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家に帰ると、数日前に購入した重要文献が早々と届いていた。今年の3月に発売されていたので、いま気づくのが遅いくらいなのだけど、ベン・ニコルソンの未発表書簡やそのほかスケッチ、メモなどをまとめた一冊。がしがしと読み始める。以上。

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